教育、学び、そして学校 〜 110

公開: 2024年6月1日

更新: 2024年6月1日

注 110. 日本社会が先送りしてきた社会問題とは

過去50年間、日本社会が問題の存在を知りながら、その解決に着手せず、先送りをし続けてきた社会問題には、人口減少問題、雇用制度問題、教育制度問題、産業構造問題などがあります。これらの問題は、一見、それぞれが独立した問題のように見えますが、実は、お互いに強く関係している問題です。そして、その根底には、明治時代の国家戦略の影響が、強く残っています。

人口減少問題の原因には、少子化問題があります。その少子化問題の原因には、教育制度・教育政策の問題があり、その教育制度問題に強く影響しているのが、雇用制度問題です。産業構造問題は、他の問題と関係なさそうに見えますが、実は教育問題の影響を強く受けており、その原因に、明治時代からの国家像が影響しています。特に、教育制度と雇用制度の問題は、強く関係しあっていて、単独の解決は、問題解決になりません。

この教育制度と雇用制度の問題の関係は、もともと、これらの問題が、国内産業の高度化を目指した国家の政策で導入された終身雇用制度年功序列制度によって、大学教育における専門教育が実社会の仕事と切り離されたことが原因でした。このことは、一時的に雇用の安定化をもたらしましたが、雇用の流動性を損ない、社会的には、人材の有効利用が不可能になりました。

さらに、大学の専門教育と実社会が分断されたことと、新入社員の一括採用、社内教育の普及によって、企業による人材の採用が、大学の偏差値を基準に行われるようになり、「良い企業に入社するために、良い大学へ進学する」と言う慣習が生まれました。「大学で何を学んだか」に関係なく、企業に入社すれば、社内教育で学び直すからです。これは、他の国々の雇用慣行とは全く異なるものです。

「良い大学へ入学する」ことが重要になれば、「良い高校へ進学する」ことが、最も有効な方法になり、その連鎖から、「良い小学校へ入学する」ことが重要になります。ここから、日本や中国の「進学競争」が始まりました。そして、その進学競争が、少子化を生み出したのです。つまり、これでは、教育制度を改革しても、雇用制度が変わらなければ、社会全体は変わらないのです。

参考になる資料